夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
ーーガッシャーン……ッ!!
「すみません!失礼しましたっ……!!」
店内に響く物音と叫び声。
「!!……っ、あ……」
ハッと我に返って、僕はアカリさんからパッと離れた。
さっきまで彼女の鼓動以外聞こえなかった音が一気に耳に入って来て、慌てて辺りを見渡す。
幸い、さっきの物音と叫び声は僕達が原因ではなく他ごとで粗相をした店員さんによるもの。奥の通路先であるこの場所は死角になっていて、誰にも見られてはいなかった。
でも……。
僕は……今、っ……何をしようとしてッ……。
自分は今間違いなく弟と、その想いを裏切ような行為をアカリさんにしようとしていた。しかも、自分には婚約者がいる身でありながら……。
こんな事、許される筈がない。
婚約者がいながら、別の女性に触れたいと思うなんてーー……。
自分の中に沸いた信じられない感情を疑いつつ、身体に響くうるさい鼓動が嘘ではない事を告げているようだった。