夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「っ……すみま、せん。少しっ……具合が悪くてッ」
苦し紛れに口から漏れた声は、心の動揺を誤魔化しきれていない証。
アカリさんの顔が見られなくて、僕は俯いたままその場から離れようとした。
「っ……待って下さい!」
逃げるように歩き出した僕を呼び止めたアカリさんが、僕の手に、何かをギュッと握らせる。
「これ、私の……ポケ電の番号ですっ」
彼女の声が、震えてた。
何故だか、分かる気が……する。今アカリさんがどんな表情をしているのか、見なくても分かる気がした。
顔を真っ赤にして、声を絞り出して、自分の気持ちを伝えてくれてる。
っ……そんな事、ある訳ないのに。
そんな事、あっていい筈ないのにーー……ッ。
僕の心の中で、アカリさんは真っ直ぐに、他の誰でもない僕の事を見つめてくれていた。
「っーー……ダメですよ!ッ……こんな所、アランに見られたらっ……誤解されてしまう」
「!……マオさん?」
都合の良い、夢のような妄想を振り払うように、僕はゆっくりアカリさんの手を解くと、渡されたメモ用紙を返した。