夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
そんな僕にヴァロンさんはニッと笑うと、アキレス腱を伸ばしたりその場でピョンピョン跳びながら手首を回したり、軽い柔軟をしながら説明を続ける。
「今から100数える間に、見つからない場所に逃げる。まあ、鬼ごっこと隠れんぼを混ぜた遊び、かな?
逃げる場所は港街全体だが、店や建物の中には入らねぇ。……だが、見付けるだけで終わりじゃない。俺を捕まえなきゃダメだ」
説明を終えたヴァロンさんが、少し屈んで目線を合わせて、僕の瞳を真っ直ぐに見つめてきた。
その、無邪気そうなのにどこか獲物を狙う豹のように鋭い、"捕まえてみろ"と挑発する輝きが、いつも僕の心を震わせる。さっきまで、鬼ごっこ=遊びだと僅かながらに軽く感じていた気持ちが、ガラリと変わった。
「どうだ?出来るか?ミライ」
本能で悟る。
これは遊びではない、真剣勝負なのだとーー。
「っ……はいっ!!」
ワクワクともゾクゾクとも言える胸の高鳴り。鳴り響く鼓動に突き動かされて、自然と大きな返事が口から飛び出ていた。