夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
返事を聞いたヴァロンさんは頷いて僕の頭をくしゃっと撫でると、「よし、じゃあ……スタートだ!」と言って、その場を駆け出して行った。
遠ざかっていく足音を聴きながら、僕は目を閉じて数を数える。その間もこの鬼ごっこに勝利する為の対策を練った。
相手はただの人じゃない。今までに数え切れない程の依頼を熟し、誰もが無理だと思う任務でさえ一度も失敗せず成功させ、毎回別人のような完璧な変装で人を惑わす、伝説の夢の配達人と謳われている人。
そんな彼を捕らえる事は、きっと将来自分が夢の配達人になって引き受けるどんな任務よりも難題。
でも、この難題をクリアしなきゃ、自分は一生この手に白金バッジを手にする事は出来ない。
いや、手にする資格はないのだと思った。
ーーそう。
今日与えられたこの課題は、ある意味僕にとっては最終試験と言っても過言ではない程に重要なものだ!!
100まで数を数え終わった僕は、ヴァロンさんの説明をもう一度思い出しながらその場を駆け出した。