夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
『制限時間は今から2時間後の15時を報せる鐘が鳴るまで。それまでにミライ、俺を捕まえられたらお前の勝ちだ!』
『今から100数える間に、見つからない場所に逃げる。まあ、鬼ごっこと隠れんぼを混ぜた遊び、かな?
逃げる場所は港街全体だが、店や建物の中には入らねぇ。……だが、見付けるだけで終わりじゃない。俺を捕まえなきゃダメだ』
この説明で、僕はすっかり自分が"鬼の役"でヴァロンさんが"逃げる役"だと思い込んでいた。
ヴァロンさんは、一言も、僕が鬼だとは告げていないのに……。
つまり、この鬼ごっこは互いが鬼であり、"捕まえた方が勝ち"。
見付かる訳がない。見付けられる筈がない。
何故ならヴァロンさんは、ずっと気配を消して僕の跡を付けていたのだから……。
圧倒的に、負けた。
ヴァロンさんは僕と別れた時と、容姿も服装も全く変わっていない。
「ーーッ、……参り、ました!」
そう言って、そのまま地面に尻餅を着いて、僕は「あははっ」と声を出して笑った。
負けた筈なのに、楽しくて、嬉しくて……仕方がなかった。