夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

そして今も……。
秘書さんの話を聞いて私が真っ先に思い浮かんだのは、"ヴァロンが居てくれたら"という事だった。

「貴女様の身一つで、アルバート様も会社も……みんなみんな救われるんです!
どうかっ、お考え下さいッ……!!」

ーー私は、YESともNOとも、即答する事が出来なかった。


守られて、頼ってばかりいた自分。
ヴァロンはいつだって、自分の事より他人の事を考えていたのに……。
この三年間、彼を失った私が出来た事はただ自分と子供達の生活を1日1日熟す事だけ。

……きっと、だからヴァロンは疲れてしまったんだ。
"ヴァロン"として他の誰よりも頑張っていたから、彼は今"マオ"という人物になって自分の為だけに必死になって生きている。

記憶を失くした彼を、私に責める資格なんて……ない。
これは、この現実は……。ずっと守られて、自分の立場から逃げて来た私に訪れた試練なのだ。

……
…………。
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