夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
***
ミネアさんのお気に入りで、彼女の父親であるハンク様が経営している高級ホテルのロビー。
たくさんある席の中で、なるでく目立たない位置にある端のソファーに腰を掛けながら僕はミネアさんを待っていた。
そして、さっきまでの事を思い返していた。
何故だかずっと、アカリさんの事が頭から離れない。
初めて会った時から、そうだった。
彼女の笑顔も、声も、料理も……。何より時折見せる、僕を見つめる何か言いたげな瞳。
"誰の事を見てるの?"
そう、問いたくなる瞳。
きっとアカリさんは、僕の中に僕じゃない他の誰かを見てる。それはおそらく、アランの言っていた別れた旦那さんなのだろう。
僕がさっきアカリさんの言葉を聞きたくないと彼女の言葉から耳を逸らしたのは、僕自身に向けられている言葉ではないと……感じたせいもあるのかも知れない。
「彼女の旦那さんが、僕なら良かったのに……」
彼女が旦那さんと別れたのが三年前。
僕が記憶を失くしたのも三年前。
ある筈ないと思いながら、その不思議な偶然に自分の中に生まれていた微かな願望という名の光が、思わず口から漏れていた。
ミネアさんのお気に入りで、彼女の父親であるハンク様が経営している高級ホテルのロビー。
たくさんある席の中で、なるでく目立たない位置にある端のソファーに腰を掛けながら僕はミネアさんを待っていた。
そして、さっきまでの事を思い返していた。
何故だかずっと、アカリさんの事が頭から離れない。
初めて会った時から、そうだった。
彼女の笑顔も、声も、料理も……。何より時折見せる、僕を見つめる何か言いたげな瞳。
"誰の事を見てるの?"
そう、問いたくなる瞳。
きっとアカリさんは、僕の中に僕じゃない他の誰かを見てる。それはおそらく、アランの言っていた別れた旦那さんなのだろう。
僕がさっきアカリさんの言葉を聞きたくないと彼女の言葉から耳を逸らしたのは、僕自身に向けられている言葉ではないと……感じたせいもあるのかも知れない。
「彼女の旦那さんが、僕なら良かったのに……」
彼女が旦那さんと別れたのが三年前。
僕が記憶を失くしたのも三年前。
ある筈ないと思いながら、その不思議な偶然に自分の中に生まれていた微かな願望という名の光が、思わず口から漏れていた。