夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「ーーマオ様!ただいまっ!」
「!!ッ……」
背後からガバッと抱き付きながら声を掛けられて、心臓がドキリと大きく跳ね上がる。
この声、フワッと香る柑橘系の香水の匂いーー。
「ミ、ミネア……さん」
「ふふっ、ごめんなさい。驚かせてしまいましたわね!」
ミネアさんは思わずソファーから立ち上がって自分の胸を押さえる僕を見て笑うと、コツコツとヒールの音を響かせながら正面にやって来た。
僕を見上げていつもみたいに微笑ってくれている彼女を見て、先程の呟きが聞かれていなかったのだとホッとする。
僕は、悪い男だーー。
ミネアさんという素敵な人が在りながら、心はフワフワと空を浮かぶシャボン玉のように彷徨って、自分の定まる場所を探していた。
だから、そんな僕に神様はずっと怒っていると思うーー……。
「ふふっ」
「?……ど、どうしました?僕の顔に、何か付いてますか?」
僕の顔を見つめたままずっとニコニコしている彼女に問い掛けると、その答えはあまりに素直で美しくて……。嘘や罪悪感でいっぱいの僕の心を痛く攻める。