夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「っ……何を言っている!
オレの母親と貴様の母親は恋敵なんだぞッ!!」
オセロの盤面に両手をバンッと着いて、勢いよく椅子から立ち上がった。
ぐちゃぐちゃになったオセロの駒が、カランカランッ……と音を立てて飛び散る。
兄上の言葉に"嬉しい"と感じてしまった自分を否定したかった。
兄上とその母親は自分の母親の仇ーー。
それが、今までの自分の人生の道しるべだったから……。
それを失ったら、自分を見失う気がして怖かった。
それなのに……。
「そんなん、俺達には関係なくね?」
兄上は、たった一言で終わらせる。
首を少し傾げながら、ニッて笑って……。意地悪そうな笑顔なのに優しい瞳で、オレを見てきて……その恐怖を抑え込んでくれた。
「親は親だろ?俺達は俺達だ。
俺は父さんに感謝してるよ。俺に、兄弟《お前》を遺してくれた事」
「……」
「……てか!
あ〜あ、ぐちゃぐちゃじゃん」
「……飲み物を買ってくる」
「!……はぁ?!逃げんなよ〜?
この勝負は仕切り直しだかんな〜?早く戻ってーー……」
背後に向かって叫んでくる兄上を遮るように扉を閉めて、病室を出た。