夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

廊下に出た瞬間。
熱い涙が瞳から流れて、ポタポタと地面に落ちる。


今までずっと……。
母親の無念を晴らす為だけに、自分は存在しているのだと思っていた。
その為に、自分は産まれてきたのだと……。

でもーー。

『俺は父さんに感謝してるよ。俺に、兄弟《お前》を遺してくれた事』

それは違うのだと。
オレに新たな道を開いてくれた。

そして……。

『お願いっ……今の話、ヴァロンにちゃんと話してあげてッ?!
貴方が弟だって知ったら、ヴァロンは絶対に喜ぶわ!』

『ヴァロンと貴方は、解り合えるっ…。
ヴァロンも、ずっと自分が独りだって苦しんできたのッ……』

少し前に、アカリ様に言われた言葉の意味がようやく分かった。
兄上の中には微塵も"オレや母がいなければ良かった"という想いは、ないのだ。

「……くそッ。
これが、夢の配達人の兄上《ヴァロン》の魔法の言葉の力か」


……そう呟きながらも、分かっていた。
その言葉以上に美しいのは、心。

飾らない、真っさらな、兄上の魂なのだと。
< 229 / 411 >

この作品をシェア

pagetop