夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
兄上は今記憶を失くしている。
上手く使って、自分の思い通りに出来るのに……。優しく手懐けて思い通りに進ませればいいのに、冷たくして、兄上を傷付けてばかり。
そう。
まるで、ただの虐めなんだ。
父を……。自分の息子をたぶらかした娼婦の女の息子だから?
自分が息子に与えた人生のルートを脱線させたから?
……何か引っかかる。
他に、何かあるんじゃないか?……と。
そんな事を思いながら、これまでの自分の知る祖父を思い返していた時。
ーーバサバサッ……ドシャッ!
机や棚からファイルが崩れ落ちるような音が、扉の方からした。
ハッとして目を向けると……。
「!……ッ、兄上」
少し開いていた扉。そこに居たのは、茫然と立ち尽くす兄上。
その足元には、兄上が作ったカフェの企画案をまとめたファイルが落ちていた。
結果が出てからも、兄上は自分の企画案を見直していた。
おそらく、自分では分からなかった企画案の反省点や改善点をシャルマ会長に求めに来たのであろう。