夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
仕事の事も、家族としても変わろうとしていた兄上。
それが、こんなタイミングで……。
どう声を掛けていいのか、分からなかった。
すぐに行動出来ずに居ると……。何も言わず、静かに足元に落ちたファイルを拾って、兄上は俯いたまま社長室の前から姿を消すように歩き出す。
「っ……兄上!」
このまま放っておいてはいけない気がした。
私は追いかけるように社長室を飛び出した。
「兄上!っ……お待ち下さい!兄上!」
「……」
幸い、すぐに追い付いて兄上の肩を掴んで引き止める事が出来た。
……けど。
引き止めたのはいいが、何を言っていいのか分からず、また言葉が出てこない。
慰めの言葉?弁解の言葉?
何を述べても違う気がした。私が本当に伝えたい言葉とは違う気がして……。悩んで、躊躇した。
すると……。
「……信じてるよ」
「え……?」
この状況下で、信じられない言葉。
そう呟いた兄上が、顔だけ振り返って、私に微笑んだ。
その美しい微笑みを見た瞬間、頭が真っ白になって……余計に言葉が出なくなる。