夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

すると、私の様子を見てまたジュゼが微笑む。今までにない、和やかな車内。

「では、シャルマ様の邸宅へ向かいますね。
……!っと、少々お待ちを」

しかし。
シートベルトを締め、出発しようと思った矢先。ジュゼのポケ電に連絡が入った。

「もしもし。
……おおっ、ディアス殿!ちょうどようございました、これからアラン様と……。
ーー!?っ……何ですと!マオ様がっ……」

「!……兄上?」

ジュゼに連絡をして来た相手は、どうやら兄上の側近であるディアス。奴は兄上を護るという面では信頼出来るが、これまで祖父側に付いていた私を嫌っており犬猿の仲。
その私の側近であるジュゼに連絡してくる事なんて珍しかった。
そして、ジュゼの反応を見て胸が騒つく。

「兄上がどうしたッ?
ジュゼ!兄上に何かあったのか?!」

後部座席から運転席に身を乗り出して尋ねると、ポケ電を一旦耳から離したジュゼが答える。

「マオ様がッ……お屋敷から居なくなり、行方が分からないそうです!」

「!!ッ……」

ジュゼの言葉を聞いた瞬間。母上を失った時の想いが、オレの中に浮かんだ。

何故、独りにしてしまったのだろうーー。

兄上《ヴァロン》はオレの孤独を救ってくれたのに、オレは何も出来なかった。
母上の時のように、オレはまた自分にとって大切な人をを救ってやる事が……出来ないのだろうか?

……
…………。
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