夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「パパのにおい、ヒナだいすき〜!」
ハンガーにかかっていたヴァロンのワイシャツを両手で抱くようにして、ヒナタが微笑む。
その笑顔を見て、思い出した。
まだ赤ちゃんだった頃のヒナタは、どんなにぐずっても、ヴァロンが抱けばすぐに泣き止んだ。
ヴァロンがいない日に夜泣きが酷い時も、彼のワイシャツで包んでやれば泣きやんで……。今みたいに、微笑っていた。
想い出がよみがえり、目の奥が熱くなる。
……覚えて、るんだね?
ハッキリした記憶は無くても、匂いという記憶でヒナタはマオさんがヴァロンだと気付いているんだ。
会わせてあげたい。
「マオさんがパパなんだよ!」って、この子に話したら、どんなに喜ぶのだろう?
ーーでも。
今はまだ、それは出来ない。
「……そっか。
ヒナはママと一緒で、匂いフェチなのね」
精一杯の笑顔を作って、娘に歩み寄るとギュッと抱き締めた。