夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

心配なんて、される訳がない。僕がいなくなって騒ぎにはなっているに違いないが、それはきっと"心配"ではない。
屋敷のみんなは、僕がいなくなって咎められる事を恐れて騒ぐだけ。

祖父が心配してくれるとしたら、それは"ミネアさんの婿"としてだけであって……僕を心配してくれなどしないだろう。

『仕事などあいつには必要ない。
私があいつに期待しているのは、ミネア嬢との件だけだ』

『あいつはただの種馬同然。
さっさとミネア嬢との間に世継ぎを設けて、その絆を確かにしてもらえば……用無しだ』

祖父の口から放たれたあの言葉が、何度も心の中で木霊した。
僕とミネアさんとの間に子供が出来たら、僕はもういらない存在。

「……ミネアさんも、そうなのかな?」


『可愛い〜!私も早く子供が欲しいですわ!』
以前デート中に街中で見かけた子供を見て、ミネアさんはそう言っていた。
結婚して、子供が出来て、家族になる。当たり前の事で、今まで嬉しい事ばかりだと思ってきた。
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