夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

家族みんなで仲良く過ごせる毎日が、幸せだと……思ってた。

ーーけど、急に怖くなった。
子供が出来て、産まれたら、どうなるんだろう?
子供が居たら、ミネアさんも僕の事なんか……。

「ーーッ、違う。
ミネアさんは……そんな人じゃ、ない」

どんな時も傍に居てくれた。
入院時の卑屈な僕を見ても、情けない姿を見せても、優しくしてくれた。


でも、そう知りながらも……怖い。
また必要とされなくなるのが……怖い。

だからあの屋敷には居たくなかったけど、ミネアさんを頼る事は出来なかった。
今は、彼女に会うのが怖い。
自分の事を、誰も知らない場所に行きたかった。

そして僕は、違う自分にもなりたかった。
『醜い』『隠せ』と祖父に塗り替えられた自分を……変える。


船に付いている客が共同に使える小さなシャワー室で、僕は自宅から持ってきた染料を落とせるシャンプーで髪を洗った。
瞳に着けていたアイレンズも外して……。
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