夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「けれど、大切なものを全ては護れない。ならば、その中で1番大切なものを選ぶしか……
ーー未来《みち》はない」
「!?ッ……」
え?消え、た……ーーッ?!
それは、一瞬の出来事。
相手との実力が、天と地程違うのだと思い知るには十分の出来事だった。
"時間を稼げたらいい"……。
そんな考えは甘かった。
『未来《みち》はない』
そう、私の右耳に囁かれたのは……目の前のディアスさんが消えたと思った直後の事。
まるで書物に描かれていた"忍び"と呼ばれる人物のような、物音一つしない俊敏な動き。
何が起こったのか、すぐには分からなかった。
気付いた時にはあっという間に背後に回られて、ヒヤッとした金属の感触が喉元に当てられていた。
「っ……」
冷や汗が頬をつたり、鼓動がドクンッと大きく身体に響く。どんどん冷たくなっていく身体は、私の本能が命の危険を悟っている証。
「今すぐ退いて下されば、命を奪うような真似はしません。
……さぁ、お帰りなさい」
「!……ーーッ」
冷たい声で囁かれて、心の悲鳴が口から飛び出そうになった。