夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
だが、ユイ様はヴァロン様の御息女。一族の血を引いている彼女を、番犬は威嚇する事はない。
おそらくシュウ様はそれを知っていて、ユイ様を私に付けたのであろう。
……全く。
彼女にしか出来ないとは言え、酷な任務を与えたものだ。
「どうぞ貴女様は、女性として幸せな未来をお進み下さい。
その方が、きっとヴァロン様もお喜びになります……」
ご自分の為にユイ様が傷付いたりする事を、あの方は絶対に望んではいない。
私はそう告げて、その場を離れようとした。
けれど……。
「ーーッ、あなたこそ……分かっているの?」
そう言って、痛みを堪えながら立ち上がるユイ様の気配を背後に感じて、私は歩みを止めた。
「父の気持ちを、本当に分かっているのっ?
……っ、分かって……ないわ。間違っているのは、あなたの方じゃないッ……!」
「……」
間違っているーー。
分かり切っている指摘が、自分の痛みなど考えないようとしていた筈の私の胸を……ほんの少しズキンッと刺した。