夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「っ……何で、あなたが……ッ。
……っ、"護れない"ってどういう事なのっ?」
アラン様が自分を護ろうとしてくれている様子に疑問を抱きながらも、ユイ様はもう一つの疑問を先に口にした。
その問いにアラン様が私を見つめたまま答える。
「…… spellbind《スペルバインド》」
「えっ?」
「我が家に代々伝わる暗示のようなものだ。
spellbind《スペルバインド》。その"魔法で縛る""魅する"という意味の通り、あいつはシャルマ様には逆らう事は出来ない」
それは、嘘みたいな話だが本当の力。
シャルマ様のspellbind《スペルバインド》の暗示の前では、誰も逆らう事は出来ない。
もちろん暗示が完全にかかるまでにはいくつかの条件や過程がある為、誰にでもかけられるものではないが……。シャルマ様の身近な人物はもちろん、私達のような使用人には必ずかけられている。
逃げ出さないように。
逆らわないように。
秘密を漏らさないように……。
この暗示の前では、私はシャルマ様に手を下す事は出来ない。
そう、シャルマ様にとって、我々は番犬と同じなのだ。
だから私には、シャルマ様の言う事を聞き、ご機嫌を取る事でしか……大切な人を護る事は出来ない。