夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
船が出港する合図である汽笛が響き、私達の耳元に届く。それは、アカリ様を乗せた船がこの港街を離れてしまった事を意味していた。
そして……。
「貴方様がいらしたと言う事は、私の命で動いていた部下達の動きも封じられたのでしょうね。
ならば、これ以上の長居は無用です」
自分が動けなくなった時の為に自分の部下達に命じてアカリ様が船に乗れないようにする手筈だったが、アラン様がこの場に来ている以上、おそらく阻止されたのだと悟る。
私の任務は、失敗。
さすがに海の上の船を追跡する術《すべ》はないし、船が目的地に着いてしまえば、そこはすぐにアカリ様の祖父であるアルバート様の私有地。我々がうかつに手は出せない。
そう判断した私は処罰と次の命令を受けるべく、シャルマ様の元へ戻ろうと歩き出す。
その際に目に映るのは、悲しそうに涙を流すユイ様。
私の為に……。もう涙なんて出ない私の代わりに、泣いてくれているようだった。
「貴女様が悲しむ事はありません。
他人から見たら何もない砂漠のような私の人生ですが、ちゃんとオアシスもあるんですよ」
すれ違い際に軽く頭を下げて、私はその場を去った。