夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
ふぅ、と短く溜め息を吐いた瞬間。背後で護っていた女がフラッとよろめき、私は咄嗟に抱き止めた。
「!っ……おっと。大丈夫か?」
「……っ!は、放して……ッ!」
女はすぐにハッとして私から離れると身構える。
勝ち目もない相手《ディアス》とよくやり合おうとしたものだ。
その顔はまだまだ少女のようで、おまけに小さな体格。ディアスが手加減したと言っても、脇腹に食らた一発はかなり響いているようで立っているのがやっとの状態。
……だが。
その瞳は真っ直ぐに私を睨み付けて警戒している。
無理もない。
この女とは3年前、私がアカリ様を連れ去った際にやり合った仲だ。
確か兄上が昔の想い人の間に設けた娘であり、私にとっては……つまり姪御。なのだが、3年前の事もあり、いきなりその蟠《わだかま》りを解くのは無理な話というやつだろう。
「……それくらい元気があれば自分で何とか出来るか」
私は少し離れた場所にあった女の上着らしき物を拾うと、それを足元に投げてやった。
上着の胸ポケットにはポケ電が入っているようだし、動けなくとも誰かに連絡くらいは出来るであろう。