夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
誰かに愛されたいと思うとか、ましてや自分が誰かを愛する事なんて絶対にないと思っていた。
愛されたいと願い、求め、オレの母親は人を憎み、狂い、亡くなった。
別の女性を愛しながらも、父親は母親と結婚し、偽りの愛を貫いてオレを産ませた。
歪んだ想い。汚い感情。
心は別の元に在りながらも、所詮男と女。身体を重ねる事なんて、簡単なんだ。
オレは、他の誰でもない自分の両親からそう学んだ。
だから、オレは一生誰かを愛したりしない。
厄介な感情に巻き込まれるのは、御免だった。
それなのに……。
『約束したんです、ヴァロンと。
例えどんな風に彼が変わっても、生まれ変わっても、私は必ずまた好きになるって。
……幼稚な、馬鹿な話かも知れないけど、私は彼と離れてからもずっとそう信じてきた。
私を支えてくれた、夢なんです』
夫を、愛おしい人を奪われたのに……。
あいつの瞳には、憎しみのカケラが少しもなかった。