夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「じゃあな……」
「ーーっ、……待って!」
これ以上自分と一緒に居たくないだろうと思い、歩き出した。
しかし、女が私の背に叫ぶ。
「っ……あの人、っ……ディアスさん、これからどうなるのっ?」
足を止める気はなかったが、その質問に思わず振り向いてしまった。
「ディアスさんをシャルマの暗示から、助けてあげる方法は……ないのっ?」
「……」
「暗示をかける方法があるなら、当然解く方法もあるんでしょ?あなたなら、知ってるんでしょ?
っ……だったら教えて!」
……てっきり、"何で私を助けたの?"とか。そういう類いの質問かと思っていた。
けれどこの女は、自分の気持ちよりも他人の事を優先した。怖いであろう、憎いであろう、この私相手に……。
ディアスの事を想って私を見つめる瞳。
その瞳が、兄上と重なって……。その美しい心が、堪らなく羨ましくなる。
話す気など、なかった。
我々一族の能力は、一族の中でもごく僅かな者しか知らない事。その秘密を他言する事は禁じられていた。
だが、私はいつからこんなに変わったのだろうか?
必死に他人を救おうとする女に、自分の知る限りを話してやりたいと思った。