夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

「つまり……シャルマは稀血《まれち》だから、能力《ちから》を使える。そのシャルマから輸血してもらえたお父さんは……」

「ご名答。
兄上は紛れもなく稀血《まれち》。兄上ならば、ディアスを救う事が出来るだろう」

私の言葉を聞いて、険しかった女の表情が少しだけ明るくなった。
けど、ぬか喜びをさせる訳にはいかない。
私はすぐに付け足す。

「だが、正直今の兄上では厳しいだろう」

「!……え?」

「spellbind《スペルバインド》の暗示は言わば相手を強制的に従えようとする主《あるじ》の欲望。その想いが強ければ強い程呪縛は深い。
果たして今の兄上《マオ》に、シャルマ様の欲深さを打ち破るほどの強い想いが……あると思うか?」

「っ……」

「……。
生まれ持った素質だけなら、私の父、リオンも間違いなくシャルマ様に勝《まさ》っていた」

問い掛けに言葉を詰まらせる女に、私は自分の父リオンについて話しながら説明した。
能力《ちから》を持つ者同士がぶつかり合った時の事を……。
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