夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「父上はspellbind《スペルバインド》の暗示など使わずとも、自然と人から愛され、思い通りに導く能力《ちから》があった。
また、人の過去や未来を視《み》る能力《ちから》もあったらしい」
そう、我々一族の秘めた能力《ちから》はまだ未知数な部分が多い。正直、能力《ちから》を持っていない自分では分からない事だらけだ。
「……しかし。
父上は祖父シャルマの手によって消された。同血族には能力《ちから》が効きにくいにも関わらず、だ。
それはおそらく、"欲"の差。シャルマン様と争うには、父上は優しすぎたんだ」
野望に溢れた祖父とは違い、父はいつだって無欲だった。決して自分の能力《ちから》を、己の欲の為には使わなかった。
そして、おそらく兄上も……。
ーーいや、一つ。
たった一つ希望があるとすれば……。
「じゃあ、シャルマの命が尽きるまで待てと言うの?父さんを助けるのも、ディアスさんを救うのも……」
「いや、まだ希望は残っているじゃないか」
「?……希望?」
私の言葉に首を傾げる女に、足元に転がっている上着を掛けてやりながら続ける。