夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「お前が必死で兄上の元に行かせようとした彼女は、間違いなく希望の光だよ。
アカリ様ならきっと兄上を変えて、全てを救ってくれるだろう」
そう口にしたら、ほんの少し寂しくなった。
認めたくなかったのに……。こんな事、言いたくなかったのに……。
悔しいくらいに、認めざる得ないくらい、お似合いなんだ。
自分の兄と、初めて本気で想えた女が……。
どんなに笑顔にしたくても、オレには困らせた表情《かお》にしかしてやれない。
唯一彼女が微笑むのは、兄上の話をしてやる時だけ。
兄上だってそうだ。
寂しそうな、悲しそうな笑顔をいつも浮かべている。
二人の本当の笑顔を見たい、と望むのならば、答えは……たった一つだ。
兄上とアカリ様を会わせてやる事ーー。
「……不思議ね。もう、怖くないわ」
「ん?」
「あなたの事、もう怖くない」
上着を羽織らせてやったオレを見上げて、女が微笑った。
その笑顔を見て、オレもつられてフッと微笑う。
三年前の自分とは違うのだと……。
寂しさと同時に、ようやく変わり始める事が出来た自分を知って、オレの心は複雑ながら軽くなっていた。