夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
だって私も知ってしまったもの。
あの人の本当の優しさを……。
『言えばいい。貴方は私の夫なのだ、と……。
兄上に本当の事を話して、思い出してもらえ』
港街の乗船場で私を送り出してくれる際に、アラン様は言ってくれた。
『もう、いいじゃないか。我慢しなくても……。
お前は今日まで充分に頑張った。オレが認めてやる』
『難しい事や先の事より、大切なのは今だろう?
……さぁ、行け!兄上を、頼んだぞ』
兄上を頼んだぞーー。
そう私に言った時。アラン様は背を向けていたけど、口調と声で分かった。この人は本当に心の奥底から、お兄さん《マオさん》を心配しているんだって……。
それに……。
「貴女様とマオ様のご関係は存じ上げております。執事の立場でこんな事を口にするのは、無礼を承知。
……ですが、私は!っ……私にはアラン様の幸せが、1番なのです」
私に訴えるジュゼさんの声、震えていた。
アラン様が本当に冷たい人なら、いくら直属の執事さんと言えどもこんなに主人の幸せを願う事はないだろう。
……
…………。