夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
***

みんな、みんな幸せになってほしいーー。
そう、思う。

けれど、私が愛するのはたった一人だ。
マオさんの記憶が戻ればアラン様だけではなく、ミネアさんも辛い想いをする事になるだろう……。

誰かが幸せになるには、その背景には傷付く人がいる。みんながみんな、幸せになる事は不可能だ。
誰よりも他人の幸せを願っていたヴァロンが今の私を見たら、幻滅するだろうか?

ーーそれでも。
誰よりも愛する人の傍に居たい。
誰よりも愛する人と幸せになりたい。

神様、どうか……彼に逢わせて下さい!!

心の中で、そう強く願った瞬間だ。
私の鞄に付いていたお守りの鈴ーー。猫バロンの鈴がチリンッと音を鳴らした。
馬車は確かに揺れているが、鈴をそんなに鳴らす程の衝撃はなかった。なかったの、に……。

「……、っ……ヴァロン?」

呼ばれたような気がして、張り付くようにして窓の外を見つめる。
当然暗くて、この目に映るのは木の影がほとんどだ。
でも、……。

「っ……止めてッ!
お願いっ、馬車を止めてッ……!!」

別荘までもう少しですよ、と言う御者《ぎょしゃ》を遮って、私は馬車を止めてもらうとすぐに飛び出した。
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