夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
ーーでも。
そんな事をしたら、貴方はその背中に隠した羽根を広げて、翼を羽ばたかせて、この場から飛び去ってしまう?
驚かせたら逃げてしまう小鳥を前にしたように、私はその場から動けなくなってしまった。
だから、私は、そっと両手を広げた。
そして、彼に向かって、微笑んだ。
そしたら、驚いて目を見開いていた彼の表情が次第に歪んでいって……。その場を駆け出すと、真っ直ぐに、私の腕の中に飛び込んできてくれた。
やっと逢えたーー。
触れ合った瞬間に、私達の瞳からは涙が溢れ出す。
もう放したくなくて、離れたくなくて背中に手を回そうとした。
けど、その前に顔を上げた彼に両手で両頬を包まれて、じっと顔を見つめられる。
「っ……微笑って?」
「えっ……?」
「貴女の笑顔を、もっと……見ていたいっ」
「っ……」
ズルいーー。
こんな状況で、そんな事言われても綺麗に微笑える筈なんてなかった。
でも、私は微笑った。
涙を流しながらも、精一杯の笑顔を見せた。
彼の願いを叶えてあげたくて、満月に見守られながら……私は笑顔で彼を見上げていた。