夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

心臓が、止まるかと思った。


月姫様ーー?

物語りの舞台になった砂浜でアカリさんを見た瞬間、そう思った。


砂浜で寝そべっていたら、呼ばれた気がした。
"マオ"って名前呼ばれた訳じゃなく、上手く言えないけど……呼ばれた、気がしたんだ。

ゆっくり身を起こして振り返ったら、そこには月の光を浴びた彼女がいた。
まるで空から降りてきたのか?と疑うくらいに、僕の前に突然現れたアカリさん。

夜風に髪をなびかせて、僕を見つめるその姿が、フッと一瞬彼女の装いを桃色の着物に変えて……。
本物の月姫様だと、思った。


逢いたいと思っていた自分が見せた幻覚ーー?

そうかも、知れない。
でも、すぐにその姿はアカリさん自身になった。

その姿を見たら、何故かホッとした。
そして悟った。
僕はいつの間にか月姫様ではなく、"アカリさん"に逢いたかったのだと……。
物語りを読んだ時に惹かれた月姫様に彼女を重ねていたのではなく、今、この場にいるアカリさんを見つめていたかったのだ……と。
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