夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「どういうつもりですか?
私は暇じゃないんです、からかわないで下さいっ」
子供に説教するような口調でキッと私を見上げて、扉まで引っ張って行き、店から出て行くように背中をグイグイ押してくる。
……なんて女だ。
この私に、こんな態度をとってくる女はいない。
今まで周りに居た女は例え誘いに乗り気じゃなくとも、私の見てくれや気性を恐れて自分の感情は隠し、ご機嫌を伺って来る奴等ばかりだった。
それなのにこの女は、物怖じせず、ありのままの姿で向かってきてくれる。
それが、どんなに嬉しい事が分かるだろうか?
私が私でいても、変わらないでいてくれる存在ーー。
……なるほど。
これが、兄上《ヴァロン》が惚れた女か。
「ーー分かった。
ならば、仕事が終わるまで待とう」
「!……えっ?」
私の言葉に、アカリ様は背中を押していた力を止めて見上げてくる。
振り返れば、まるで子供のように無垢な黒い瞳と自分の瞳が重なり、胸が温かくトクンッと鳴った。