夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

今の貴方《マオさん》を、愛しているからーー。

と、言ってあげたい。
が。彼から"ヴァロン"の部分を全て取り払って胸を張ってそう言える程、私は"マオさん"の事を知らなさすぎたのだ。

もしもこのまま昔の記憶が全く戻らなくても、私は本当にこの先ずっと平気でいられる?
昔の彼を懐かしんだり、昔の彼と比べたり、その事で彼を傷付けたり……しない?

私は、“ヴァロン"に戻ってきてほしいだけなの……?


自身に問い掛けたら、いつの間にか瞳に溜まっていた涙が頬をつたり落ちた。
すると、それを見てハッとしたマオさんが慌て始める。

「!っ……す、すみませんっ!変な事聞いちゃって!
っ……あ、あの……ッ」

彼はその手を伸ばして、私の涙を拭う事もない。
その胸に抱き寄せて、頭を撫でてくれる事もない。
これが、今の彼なのだ。


「っーー!!」

目の前で慌てふためく彼の腕の中に自ら飛び込んで、私は泣いた。
その体温や匂いを"懐かしい"と感じる自分に、また涙が溢れてきて……。どこから、いつから夢の中に入ってしまったのか……分からなかった。

……
…………。
< 332 / 411 >

この作品をシェア

pagetop