夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
連れ去ってしまいたいーー。
一瞬そんな気持ちに駆られながらも、目の前のまだまだ少女のような彼女を見ていたら、”今までの私”は完全に消え失せていた。
「貴女の仕事が終わるまで、こちらでコーヒーでも飲みながら待ちます。
それなら、問題ないでしょう?」
柄にもない事を口に出し、私はまたアカリ様を見て微笑っていた。
強引に、自分の都合や考えを押し付ける事はこの女には逆効果。
……いや。
アカリ様にはそうしてはいけない。
出来ないのだと、感じた。
私が一人の女の為に、何時間も待つ。
それは、32年生きていて初めての事だった。