夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
波の音も、風の音も、鳥の鳴き声も聞こえなくて……。ただ、彼女だけを見つめていた。
アカリさんは僕の質問に一瞬驚いて、その後頬をほのかなピンク色に染めて、笑顔で一言答える。
「はいっ」
って……。
たった、一言だった。
でもその返事は、僕にとってこれ以上にないもので……。いっぱいに満たされた想いが溢れた。
ありがとうーー。
そう言う前に身体が動いていて、僕はアカリさんを引き寄せると、思いっきり抱き締めていた。
……しかし、そのまま動けない。
嬉しい?
泣きたい?
幸せ?
痛い?
色んな感情が一気に襲って来て、上手く呼吸が出来なくなりそうだ。
どうすればいい?
僕は、どうしたいーー?
今まで空っぽだった心が満たされた途端、突如訪れた幸福に自分は追い付けなくて取り残されていた。
「……マオさん」
そんな僕に、アカリさんが呼び掛ける。
そして……。
「好きです」
今まで聴いた中で1番美しい声色でそう告げると、アカリさんは僕にそっと口付けた。