夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
彼が、彼でないような気がした。
私は今まで、彼が例えどんなに姿を変えていようが見付けられる自信があったし、その度に何度もときめいて恋をしてきた。
……でも。
今回は、少し違う。
彼に感じるドキドキの中に、何とも言えない不安な感情が渦巻くの。
「……。
そうですね。もう夜も遅いですし、ここで手短にあの時の返事をしてもいいですか?」
黙ってじっと見つめたままだった私に気付いた彼が、そう問い掛けてくる。
「っ……」
い、や……。聞きたくない……ッ。
心の中ではそう叫んでいるのに、その気持ちが私の口から言葉となって出る事はなかった。
彼に見つめられて、まるで有無を言わせない魔法をかけられたように話せない。
そんな状況下の中、彼が口を開く。
「すでにご存知かも知れませんが、ミネアさんに子供が出来ました。
僕はミネアさんと結婚して、良き夫であり良き父親になろうと思います」
無情にも放たれたその言葉が、鋭い氷の刃のように心に突き刺さって、更に私を凍り付かせた。