夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

正直、一瞬何を言われているのか分からなかった。
でもそれは噂されていた事や新聞や週刊誌に書かれていた事が事実である事を、彼の口から伝えられてショックだったからではない。

「だから、アカリさんの気持ちには応えられません。
本当にごめんなさい」

その事を……。
あの日の約束の答えを告げてくる彼の表情が、私にとってはとても悲しい言葉の筈なのに、とてもすっきりとしていたからだ。
自分の中で引っかかっていたものが、迷っていた事が全て解決したかのように……。一礼して頭を上げた彼は、清々しく微笑んでいた。

「今後は、二人きりで会う事もしません。
だから最後に、これを受け取ってもらえませんか?」

持っていたビジネスバッグを漁り、彼が私に一冊の本を差し出す。それは、彼が大好きだと言っていた絵本『月姫の祈り』。
その、互いを想い合いながらも結ばれない男女の結末を"私達も同じ"なのだと言われた気がした。
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