夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「……なんで、誕生日知ってるんですか?」
乗り込んだ最終電車の中。客席には座らず出入り口付近で立ち尽くしながら、僕はついさっき言えなかった問い掛けをポツリと呟いた。
『ほらほら、行かないと!
早く帰って、ミネアさんと赤ちゃんに誕生日を祝ってもらって下さい!』
今日は、世間はクリスマスイブ。
普通ならばあの時、クリスマスのお祝いをほのめかす言葉を言う筈だ。
それなのにアカリさんは、"誕生日"と言った。
「っ……やっぱり貴方は、昔の僕をッ……知っていたん、ですね?」
背中を押された時に、彼女の手が触れられた部分から感情が伝わってきた。
『お誕生日、おめでとう。
生まれてきてくれて、ありがとう』……って。
優しくて、痛いくらいの愛情に包まれた祝福の言葉。
「っ……こんな能力、いらなかったッ」
僕の中に目覚めた、触れ合った部分からその瞬間相手が考えている事や思っている感情を読み解く事が出来る能力。
気持ちが触れ合ってしまえば辛くなると分かっていたから、必死に必死に自分から触れないようにしていた。