夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
駅で待ってくれている貴女を見付けた時。
僕を見上げてくれた時。
絵本を受け取って、微笑ってくれた時。
本当はずっとずっと、抱き締めたかった。
いつから僕を待っていてくれたの?
寒さで赤くなった頬や手に触れて、包み込んで、暖めてあげたかったよ。
「っ……」
……けれど。
もう、戻る事は出来ない。
自分が乗ってしまった運命という名の電車は、戻る事も途中下車出来ない事も分かっていた。
ならばせめて、辿り着くその先が地獄に行かないようにするしかなかった。
そして、それが出来るのは能力を持つ自分だけだと……気付いてしまったから。
「やっぱり、来世は鳥になりたいな……」
その望みが言霊になると信じて、溢れそうな涙を瞼を閉じて封じ込める。
『でも、私は信じたいです。
前世は覚えていませんけど、来世があるって思ったら……。もしもこの人生の未来が辛いものでも、頑張って全うしよう、って思えるから……』
ーーうん。
心の中で美しい想い出の言葉に頷いて、そして僕は瞼を開いた。
君との約束が翼になって、きっと僕を導いてくれるだろう。
【夢の言葉と約束の翼(中)-終わり-】
次巻-最終巻-夢の言葉と約束の翼(下)に続く。