夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

「失礼致します!
……ッ?!マオ様、何をなさっているのですか!」

ハッとしたら、血相を変えたディアスが、僕の左手の手袋を外して、手を診ていた。

洗面台には、割れた鏡の破片が飛び散っていて……。
僕はようやく、自分が勢いよく手を伸ばした先が鏡だった事に気付いた。
幸い、手袋をはめていたお陰か手は切れてはおらずズキズキと痛む程度。


でも、それよりも気になったのは……。

また、見えたリアルな映像。
あれはもしかして、僕の記憶の断片なの?

三年前、病院で目覚めた時に全て失っていた記憶。
さっき自分の頭に浮かんだ映像が、その記憶の断片だとしたら……。


「っ……ディアス、僕はッ……。僕は本当にっ……”マオ”って人物、なのっ?」

ずっと感じていた、胸につかえていた疑問を、僕はやっとの思いで吐き出した。

祖父シャルマが持つ会社で、弟のアランと一緒に素晴らしい業績上げて、これまでずっと仕事一筋に生きてきた仕事人間。

それが、僕に教えられた過去。
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