夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

確かに、周りのみんなは僕を躊躇なく”マオ様”と呼ぶ。
会社に復帰した時も、みんなが「おかえりなさい」「お待ちしてました」って迎えてくれて……。僕の過去の活躍を、褒めてくれて……。
過去の雑誌や新聞にも、確かに僕の写真や名前もいくつかあった。

”マオ”って呼ばれていた、ような気もする。


……でも。
ずっと、違和感があって堪らなかった。
全く戻らない記憶に、自分が”マオ”だと確信を持てる事なんて何一つなくて。
いつも、自分が自分ではない気がしていた。

けど、それを口にしたら捨てられると思った。
そう思ったら、怖くて……。今まで口に出来なかったんだ。

そんな、不安定だった中。
ここ最近になって自分の中に浮かび上がり始めた、”暖かい何か”……。
あれが夢でも、幻想でも、妄想でもないのだとしたら……!!


「ディアスッ……僕に、何か隠してる事……ないかっ?」

真実を知る事が、怖くないか?と問われたら、正直怖い。
もしみんなが何かを隠しているのだとしたら、それは僕にとって良くない事だから……。だから、みんなが伝えないでいてくれるのかも知れないから……。
< 54 / 411 >

この作品をシェア

pagetop