夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
僕の好きな物語に出てくる月の国のお姫様は、和装で、着物を着ている。
物語を思い出しながら、きっと、月の姫が結婚する時にはこんな衣装を纏うんだろうな。と思った。
不思議だ。
ウェディングドレスを見た時は、どれをみても”同じ”に見えたのに……。この衣装は”特別”に映る。
「見事な白無垢《しろむく》ですね」
「!……白、無垢?」
「はい。こちらの花嫁衣装は白無垢と言うのですよ」
係の人へ割れた鏡の件の報告を済ませてくれたディアスが、戻ってきてその衣装の名前を教えてくれた。
白無垢ーー。
見ていると、心が落ち着く。
それなのに、胸に暖かい鼓動が打つ。
そして、ずっと固かった僕の表情を緩ませてくれる。
それは、”あの人”の笑顔を見た時と一緒で……。
「お気に召されましたか?
しかし、ミネア様はお家柄上おそらく白無垢は……、……」
ーーディアスの声。
もう、僕には聴こえて無かった。