夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

フォークで上手く刺せないくらいに柔らかい生地は、口の中であっという間に溶けるようになくなっていった。
ホイップクリームも、見た目のボリュームほど重くなくて程よい甘さが美味しい。

しかし。
そう思うだけで、笑顔が溢れる事も胸が弾む事もなかった。
黙々と食べる作業に、一枚食べ終わる頃には何だかお腹いっぱいになってくる。


「……口に合わないのか?」

一旦フォークとナイフを置き、アイスティーを飲む私にアラン様が尋ねてきた。

「そうじゃないわよ!」って心の中でツッコミを入れる。敵とも言える相手に正面から見つめられながら、一人でこんな大きなパンケーキを食べろと言われて、楽しく美味しく食べられる訳がない。
まさに、無理な注文というやつだ。

怖い人ではないけれど、イマイチ女心が分かってないというか……。気遣いがないと言うか。
そんなアラン様を見ていると、またヴァロンの事が頭に浮かぶ。
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