夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
悲しみと罪悪感から、涙が堪えきれずに溢れてくる。
「っ……アカリ様」
「触らないでッ……!!」
力一杯突き飛ばしたのに倒れる事もなくすぐ私に手を伸ばしてくるアラン様に、自分の無力さを痛感させられているようだった。
私は伸ばされた手を振り払うと、もうアラン様の顔は見ずにその場から駆け出して店を出た。
全速力で走って女性の洗面所に入ると、すぐに水道の蛇口を捻って唇を洗い、口の中をすすぐ。
完全に注意を怠った。
怖い人じゃない、嫌いではない。
アラン様にはそんな認識があったから、すっかり油断していた。
「っ……大っ嫌い」
この出来事は、私の中でアラン様という人物の印象が確実に変わった日だった。
思わず口から溢れた「大っ嫌い」。
しかし言葉とは反対に、忘れたくても、ムカムカしながらもアラン様の事が浮かぶ。
私の心には、確かに”アラン様”が刻まれてしまっていたのだ。