夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
一度全てをぶち壊してやりたいと思った。
この店の事ではない。
私とアカリ様の関係……。
ーーいや。
アカリ様の私に対しての認識や存在を、だ。
「アラン様、っ……大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない。
騒がしくしてしまったな、すまない」
先程の騒動で散らかったテーブルの上や床を片付ける店員。そして私を気遣う店の責任者に詫びの印として飲食代に色を付けて支払いを済ませると、店を後にした。
キスをしたら運動音痴そうな見た目とは違って、実に俊敏な動きで逃げて行ったアカリ様。
涙を浮かべた瞳で睨まれた時はさすがにやり過ぎたか、と思ったが後悔はない。
私はなんとしても、良くも悪くもアカリ様の心に止まりたかったのだ。
何故なら、彼女にとって私は”元婚約者”、”シャルマ様の孫”、”兄上の弟”、その程度。
”一人の男”として見られていないのが一目瞭然だった。