夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

傷心の彼女相手。
今までのように強引ではなく、ゆっくり構えて、優しくして、惹きつけてやろうと思った。

でも、すぐに悟った。
アカリ様の中には、今も兄上が在る。
傍に居なくとも、彼女の心の中には兄上が常に居て、他の男など眼中にも意中にもないのだ。

目の前にいる私ではなく、アカリ様は今日もずっと兄上を想っていた。
何かある度に、兄上を思い出していた。
それを悟ったら無性に腹が立って、一度全てをぶち壊してやろうと思った。


隙がないなら、作ればいいーー。

兄上でいっぱいな心の中に、私は強引に自分という存在をアカリ様に植え込んだ。
普通、どうでもいい。そんな曖昧な存在ならば、いっそ”嫌な想い”でもまず彼女の心に残りたかった。
私の事で、アカリ様の心をいっぱいにしてやりたかった。

私がこんな気持ちを抱いていると知ったら、きっと誰もが驚くのだろうな。
そう思いながらも、誰よりも驚いているのが自負自身だと言う現実に笑みがこぼれた。
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