夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

それは、心が弱ると必ず思い出す嫌な過去。

色仕掛けで後妻の座に着いた女が産んだ娘ーー。
今でこそわたくしをそんな風に言う人はいなくなったが、幼い頃はよくそう陰口を叩かれた。


わたくしは上の三人の兄達とは母親が違う。
兄達の母を亡くして傷心だった父を慰め、後妻の座に着いた母を快く受け入れてくれた人物なんて何人居たのだろうか?

産まれたわたくしが女だと知って安心する者。そして、女しか産めない役立たずの後妻と母を批判する者。
それはまさに敵だらけの世界ーー。

馬鹿にされない為には、強くならなきゃいけなかった。
誰よりも賢く、兄様達にも勝り、どんな強大な力を持つ親戚や関係者達も口出し出来ない程の存在に。お父様に認めてもらえる存在にーー。

……そしてわたくしは、お父様の後継者という絶対の力を手に入れたわ。

しかし、それは同時に自分をいつしか孤独の道へと追い込んでいった。
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