夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
「……今夜は、満月なんだ」
ミネアさんのお父さんの所有物である一軒家の縁側に座って、僕は夜空を見上げた。
空に浮かぶまん丸な満月。
僕の大好きな、月の国のお姫様が出て来る絵本の表紙絵によく似た満月に笑みがこぼれる。
が、周りにフワッと薄い光を放ち、時折流れる雲にぼかされるその姿は、少し儚げでもあった。
ーー泣いて、いるの?
思わず、そう問いただしたくなる白金色の光。
感情移入し過ぎなのだろうか?
僕は苦笑いして、空の満月から絵本の表紙に目を落とした。
初めて読んだ時から強く惹かれた絵本。
これだけは祖父に捨てられないように、ずっと肌身離さず鞄に入れて持ち歩いている。
満月の夜に願いを叶える事が出来る月姫様と、その月姫様を護りたいと願う幼馴染の男の子の恋物語。
長い黒髪に黒い瞳の月姫様。
読めば読むほど、僕には”ある人”の姿が重なるんだ。