夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

ーー料理、してたんだ。

僕はこの時初めて、ミネアさんが自分の為に料理をしていた事に気付いた。

『マオ様は読書でもして、少しだけ待っていて下さいな。
……いいですわね?絶対にわたくしが呼びに行くまで来ちゃ駄目ですわよ?』

……1時間位前に、そう言われた。
もしかして、あれからずっと、料理していたのだろうか?

ミネアさんほどのお嬢様は、家事とか料理とかしないと聞いていた。そういうのは使用人や料理人達の仕事だって……。
それなのに、僕の為にーーー?

僕は、ゆっくりと台所を見渡した。
近くの棚に、何冊かの料理本と食材と調味料。流し台には、調理のために使ったであろう調理器具や、失敗した料理の残骸。
そして、ミネアさんの手。いつもはネイルで綺麗な指が、爪には何も装飾されてなくて……。その上、絆創膏だらけ。

ーー気付かなかった。
こんなに近くに居るのに、僕は何も見ていなかった。
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