夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】
これは全て、診療所の医師から聞いた話。
ユメはこの田舎町の孤児院で育った孤児。ある日、ポツンと一人で孤児院の建物の前に座っていたそうだ。
その理由を、孤児院の先生はユメに声をかけた瞬間に理解した。
ーー知的障害。
ユメはその時7歳位の見た目だったらしいが、言葉は拙く、物事の理解も遅い。
正式な年齢も、誕生日も、何処から来たのかも、両親の名前すらも言えない子じゃった。
唯一言えたのが、ユメ、と言う自分の名前。
当然里親も現れなかったユメは孤児院で育ち、そこで何とか自分で出来る手伝い……。掃除や自分より幼い子供達の遊び相手をして、生きていた。
しかし、彼女は決して不幸ではなかったと思う。
明るい性格と、いつもニコニコして屈託無い人柄のユメは町の人から愛され、大切にされていたから……。
ーーだが。
生まれてこの方、今まで男《ヤロー》ばかりに囲まれた生活しかしておらず、女と言えば遊女くらいしか知らなかったワシにとって、彼女は未知の存在。
ワシは、ユメが苦手じゃった。