花咲く雪に君思ふ
「ここが光希の親がやってる店で、その裏に家があるんだ。……ん?」

「待って!」

誠太郎の案内で、店の裏へと回ると、赤い着物の人形を抱えた女と雪花が飛び出してきた。

「雪花?」

「桃矢くん、その女の子、引き止めて!その子は―」

みなまで言われなくても分かるよ。全身から邪気が溢れてるんだから。

本体はあの人形だね。

「ちょっとどいて」

「え?」

目の前にいた誠太郎を突き飛ばし、女の方へと走っていく。

「おい、光希に何する気だ?!」

誠太郎の質問には答えず、女の持っている人形を蹴りあげた。

「あ!!」

人形が腕から離れた途端、女の体は傾き、後ろへ倒れる。

すると、すかさず雪花が受け止めた。

まぁ、受け止めきれずに一緒に倒れたけど。

「ちょっとその二人見てやってよ」

「え?は?あ、ああ」

戸惑いながらも、誠太郎は二人の側まで行くと、手を差し出す。

その様子を尻目に、僕は蹴り飛ばした人形を見た。

人形からは黒い正気が溢れてだしている。

恐らく、あの女に憑いていたモノ。

「……成仏は無理だね。ここまできたなら……」

器を壊して、中にいる奴を強制的にあの世へ送るしかない。

僕は思い切り人形を踏み砕いた。

すると、割れるようなバリバリという音が聞こえ、黒い雲のようなものがもくもくと上がる。

それは集まりくっつきあって形を成した。

人形を持っていた女子供の念だけが集まった、歪な存在が、そこに浮いている。

「……人形ぶっ壊れちまった。終わったのか?」

ああ、視えてないから分かんないのか。

「残念ながら、大元は上に浮いてるよ」

「え?分かんないんだが?」

「だろうね。ちょっと黙っててくんない?」

小太刀で仕留めるには分が悪い。ここは人通りが少ないけど、ぐずぐずしている暇もないし。

久々だけど、こっちを使おうか。
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